状況別の口内炎

状況別の口内炎

大人の口内炎は、ほとんどがアフタ性口内炎ですが、子供や赤ちゃんに出やすい口内炎は、ウィルスが原因のヘルペス性口内炎やカビ(真菌)が原因のカンジダ性口内炎、ヘルパンギーナや手足口病による口内炎が多くみられます。

 

●ヘルペス性口内炎
ヘルペス性口内炎は、単純ヘルペスウィルスの感染によって起こります。生後6ヶ月以降の乳幼児に発症し、1歳〜3歳くらいに多くみられます。発症すると、発熱を伴い、口の中や唇に、水ぶくれがたくさん出てきます。また、歯茎が腫れ、歯磨きなどで簡単に出血します。治療を始めると、熱は4〜5日で落ち着きますが、口内炎は1週間〜10日ほどかかります。ヘルペス性口内炎は一度発症すれば、二度発症することはありませんが、唇に水ぶくれができることはあります。

 

●カンジダ性口内炎
カンジダ性口内炎は、カビ(真菌)の一種であるカンジダが口の中の粘膜に感染することで起こります。カンジダは口の中の常在菌で、病原性はほとんどありませんが、抵抗力の弱い子供や赤ちゃんなどに発症しやすいといわれています。口の中に白い苔のようなものが現れ、簡単に剥がれますが、苔の下は、赤くただれていて、痛みが出ることもあります。

 

●ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、ウィルスによる病気で、1歳〜5歳に多く発症します。突然の高熱と共に、喉に小さい口内炎が多数できます。口内炎は、左右対称に出てきたり、左右のどちらか片方だけにでてくることもあります。口内炎は治るまでに、1週間から10日ほどかかりますが、高熱などの症状は、4〜5日ほどで落ち着きます。

 

●手足口病
手足口病は、ヘルパンギーナと同じウィルスによる病気で、1歳〜5歳に多く発症し、大人でも発症することがあります。発熱と、口の中全体に多数の口内炎ができると共に、水疱瘡のような発疹が手のひらや足の裏、ひざ、お尻などに現れます。発熱がない場合もあります。手や足にできる発疹は痛みが出ることはほとんどありませんが、口内炎は、痛みが出るといわれています。

 

 

子供や赤ちゃんが口内炎になった場合、症状をうまく伝えることができないことがあります。特に、赤ちゃんは、口の中の不快を訴えて泣いたりしますが、大人である親がどうして泣いているか、わからないこともよくあります。子供や赤ちゃんが口内炎になると、口内炎の痛みで、食べ物を食べることを嫌がり、ひどい時には、水分を摂るのも嫌がることがあります。授乳中の赤ちゃんなどは、おっぱいを飲まなくなることもあります。この場合、栄養不足や脱水症状になることがありますので、注意が必要です。

妊娠していると、アフタ性口内炎や口角炎になりやすいことがあります。妊娠することで、全身が衰弱したり、栄養バランスの偏り、鉄乏症の貧血などが原因です。また、ホルモンバランスの変化が原因とも言われています。口内炎を予防するためには、口の中を清潔に保つことが大切ですが、妊娠すると、つわりが原因で、歯ブラシを口の中にいれると気持ち悪くなり、歯磨きがしっかりとできなくなることがあります。また、妊娠でお腹が大きくなってくると、胃が圧迫され、一度に多くの食事を摂ることができず、頻繁に食べ物を食べるようになります。その結果、口の中を清潔に保つことが困難になり、口内炎を起こしやすい状態になっているのではないでしょうか。

 

妊娠中は、産まれてくる子供のことも考え、栄養バランスを考えた食事をしっかり摂り栄養管理をし、身体を健康に保つことが大切です。妊娠中に口内炎になってしまった場合は、通院中の産婦人科を受診しましょう。妊娠中は、使える薬と使えない薬があり、他の病院で診察を受けると、妊娠してることを理由に、薬を一切処方しない場合もあります。産婦人科では、どの薬が使えるかを把握していますので、安心です。

 

また、市販されている口内炎の治療薬には、ビタミン剤や痛み止めなどの飲み薬、口内炎に直接塗る軟膏などがあります。口内炎に良く効く塗り薬には、ステロイド剤が含まれていることが多いのですが、局所に少量使うのであれば、それほど神経質にならなくても大丈夫といわれています。もし、心配なようであれば、使う前に、通院中の産婦人科の医師や、その薬を販売している製薬会社に相談してみましょう。

風邪を引くと、口内炎になりやすいという人は多くいます。口内炎は、身体の抵抗力が落ちた時や、ビタミン不足になったときに発症します。また、風邪は、ウィルスや細菌に感染することで起こりますが、身体の抵抗力が落ちていると、感染しやすくなります。風邪とは、かぜ症候群と呼ばれ、鼻や扁桃、咽頭などの上気道に起こる急性的な炎症のことで、ほとんどがウィルスに感染することで起こります。ウィルスの感染は、ストレスや疲労、不規則な生活などにより寝不足になったり、栄養バランスの偏り、脱水などにより、抵抗力が弱くなると、ウィルスなどが感染・増殖し、鼻やのどに炎症が起こります。

 

また、風邪を引くと、体力が奪われ、身体の抵抗力が弱くなり、口内炎だけでなく、肺炎や気管支炎、扁桃炎などいろいろな病気を引き起こす可能性がありますので、注意が必要です。風邪を治すためにも、ビタミンは大切です。口内炎ができている場合は、ビタミンB群を積極的に摂ることが大切ですが、風邪の場合は、ビタミンAとビタミンCを摂ることが大切です。ビタミンAは鼻やのどの粘膜を強くし、ビタミンCはウィルスを退治する身体の免疫機能を高める効果があると言われ、体力の回復につながります。

 

一度、ヘルペス性口内炎になったことのある人は、風邪を引いて発熱した後に、唇の周りに小さな水ぶくれが数個できる場合があります。これは、体内に残ったヘルペスウィルスが、風邪で抵抗力が落ちたことで、再活性化して身体の表面に出てきたものです。乳幼児や子供の場合、ヘルパンギーナや手足口病になった場合、夏風邪のような症状と共に、口内炎が出てきます。「風邪は万病のもと」、「口内炎は身体のバロメーター」といわれるように、風邪を引いたり、口内炎ができる場合は、身体の抵抗力が落ちている証拠です。ビタミンを多く含む、栄養バランスの摂れた食事を摂り、規則正しい生活を心がけ、睡眠を充分に取り、身体をしっかり休養させましょう。

ガンになると、治療の副作用として口内炎を発症する場合があります。ガンの治療には、放射線療法や化学療法というものがあり、これらは口内炎ができる原因とされています。放射線治療は、手術のように、身体にメスを入れ、ガンに侵された臓器を摘出することなく、放射線を照射することで、ガンとガンの周辺の治療をおこないます。放射線治療の副作用には、全身疲労や食欲減退、貧血などがあり、口内炎が発症しやすい状態になります。また、口の中や咽喉、食道、耳や鼻などに放射線治療をおこなった場合、唾液の分泌が少なくなり、口の中が乾燥したり、味覚異常などの症状が現れ、口内炎になる場合があります。

 

化学療法は、薬物療法のひとつで、主に抗がん剤のことをいいます。抗がん剤治療とは、抗がん剤を飲み薬や点滴などの注射で全身に行きわたらせ、身体の中にあるガン細胞を、治療する方法です。抗がん剤は、薬の効果に対して、副作用が強く出るといわれています。副作用には、嘔吐や脱毛、肝機能や腎機能の障害などがあります。抗がん剤の投与によって、ガン細胞と同様の、早いサイクルで細胞分裂をしている口の中の粘膜にも反応しやすく、また、抗がん剤の副作用で感染を防ぐ白血球の数が減少し、口の中で細菌感染を起こしやすくなり、口内炎になる場合があります。

 

口内炎は、抗がん剤によるものは、薬を投与して5日前後くらいに、放射線治療によるものは、照射開始後15日前後から発症しやすくなるといわれています。ガン治療の副作用による口内炎は、抗がん剤治療をしている患者の約4割に発症するといわれ、比較的多くの患者を苦しめています。抗がん剤の治療は、嘔吐や貧血などの強い副作用によって、体力が消耗されます。一度口内炎を発症すると、治療には時間がかかり、症状が悪化すると、ガンの治療を抑えたり、場合によっては中止しなければならないこともあります。口の中にもガンができることがあります。口の中のガンの初期症状は、口内炎のような症状が現れることがあります。口内炎の治療を適切におこなっているのに、2週間以上しても治らない場合は、ガンも疑われますので、病院で診察を受けることが大切です。

口内炎は、ベーチェット病の主な症状のひとつで、ほとんどの患者が口内炎を発症します。ベーチェット病とは、アフタ性口内炎、外陰部の潰瘍、眼症状、皮膚症状を主症状とする全身性の炎症性疾患で、日本の特定疾患に指定されており、はっきりとした原因はわかっていません。20代〜30代に発症しやすく、また、女性より男性の方が、症状が重症になりやすいといわれています。ベーチェット病による口内炎は、アフタ性口内炎で、口腔内アフタ性潰瘍ともよばれています。ベーチェット病の口内炎は、ベーチェット病の初めての症状として出てくることが多いといわれています。口内炎自体は、発症して10日ほどで治りますが、再発を繰り返すことが特徴といえます。

 

ベーチェット病の口内炎以外の主な症状には、外陰部の潰瘍、眼症状、皮膚症状などがあります。外陰部の潰瘍は、男性は陰のう、陰茎、亀頭に、女性は、大小陰唇、膣粘膜などに潰瘍ができ、痛みを伴います。眼症状は、眼球全体を包むように広がっているぶどう膜の炎症(ぶどう膜炎)が主に現れます。突然視力が低下し、短期間で回復するぶどう膜炎は、繰り返すうちに視機能が低下していき、最悪の場合、失明することもあります。皮膚症状は、結節性紅斑という、盛り上がった赤い発疹やにきびのような発疹などがでてきます。

 

疲労やビタミン不足などでできる、一般的なアフタ性口内炎と、ベーチェット病によってできるアフタ性口内炎は、見た目では区別をつけることは困難です。しかし、ベーチェット病の場合は、アフタ性口内炎が治っても、再発を繰り返したり、また、口内炎だけでなく、外陰部に潰瘍ができたり、皮膚に紅斑がでるなどの身体の他の部分にも症状が現れてきます。アフタ性口内炎の治療をしていても、再発を繰り返す場合は、病院で診察を受けましょう。